ハンセン病とは

原告の声

「らい予防法」違憲国賠訴訟提訴にあたっての原告団声明

東日本原告代表 谺 雄二

本日午後4時、熊本地方裁判書に「らい予防法」国家賠償訴訟を提起しました。

1996年3月、当時の厚生大臣が全国ハンセン病患者協議会の代表に対し、国の誤った政策「らい予防法」によって、患者・回復者とその家族の人権を著しく侵害し、言語に言い尽くせない多大の苦痛を与えてきたとして、反省、陳謝したのは、まだ記憶に新しいところでもあります。
同年4月1日、天下の悪法といわれてきた「らい予防法」は廃止されました。
これらのことによって、一般的にはハンセン病問題はすべて解決したと考えられているのではないのでしょうか。 したがって今頃、ハンセン病訴訟と言うのはどういうことなのか、と疑問視する人も多いと思います。

廃止法の付帯決議は、社会復帰者の生活に不安がないように国が支援することを求めていますが、去る3月4日、厚生省が公表した支援策は一時金上限150万円だけということでした。しかしながら平均年令73歳の障害者老人たちが、一体150万円の涙金でどのようにして社会生活ができるのでしょうか。40年や50年という長期にわたる強制隔離を続けてきた国には社会復帰者の生活を保障する責任があるのではないでしょうか。

優生保護法は廃止されましたが、同法などを根拠に半ば強制的に断種、堕胎手術をされた患者・回復者の被害については国会においても、所長連盟や日本らい学会の「見解」においても一切触れられませんでした。
国家権力による残虐行為を不問にしたままでいいものでしょうか。子もなく孫もいない私たち入所者の孤独と無念の思いを、国はどうして癒してくれるというのでしょうか。その他解明しなければならない未解決の問題をたくさん残しております。

私たちは、裁判によって国のハンセン病対策の歴史と責任を明らかにして、

  1. ハンセン病問題の真相究明
  2. 患者・回復者の原状回復
  3. 同種問題の再発防止

を図って行きたいと思っています。そのことが成就した時全国15の国、私立の納骨堂に眠る先輩たちの無念を癒す鎮魂の供養にしたいと考えています。そして、本日の提訴にあたり、私たちは全国の僚友の方々が是非私たちと共に裁判に立ち上がってくれることを心から願っています。

最後に137名という弁護団は本当に心強い見方です。私達は、各療養所の入所者や今までに社会復帰していった多くの人々、私たちに繋がる家族の皆さんと手をたずさえ、人間の尊厳のため最後まで頑張り抜きたいと思います。
国民の皆さん、およびこの暑い日にお忙しい中支援のため駆けつけて頂いた皆様に感謝とお礼を申し上げます。今後共一層のご支援をお願いいたします。

1998年7月31日「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟原告団